手をのばせば [つぶやき]
手を のばせば
すぐに 届くところに居るのに
なんて遠いのだろ
いてもたってもいられず ぼくは 逃げ出した
なるべく 遠くへ
早く 遠くへ
呪文のようにつぶやきながら
後ろも見ずに 走り続けた
その手は そこにあっても
一生 触れられない
ショーウインドーの中の
宝石みたいに
こ と ば も じ [つぶやき]
言葉では 言えないから
文字に してみたのに
文字は どんどん
私の 気持ちと 乖離する
気持ちは ずいぶん向こうに 置いてきぼりになって
もう
言葉とは 分かり合えない 関係になって
文字には ずっと 裏切られ続けてる
どうにか 自分の気持ちに 寄り添って欲しくて
頑張れば 頑張るほど
遠くに 行ってしまう
スキナヒト みたいに。
きみしか見えない [つぶやき]
夢と現の狭間を
ぷかぷかしながら
今 まさに 夢に堕ちてくところで
僕が描いてる「相手」は
ずっと きみのまま
いつになったら
上書き保存されるのかな
いつになったら
思い出せなくなるのかな
きみの手も
声も
背中も
腐敗 [つぶやき]
勝敗を競うのも
自分自身に 負けまいと ハッパをかけるのも
どれも 投げ出した
その時自分はひどく 疲れきって
生きようとする気力すらもない
澱のように 自分の中に沈んでいく
進むことをやめたときから 剥がれ落ちて
生への執着を失くした
生きてる時の 垢のような
わたしの わたしたる 証だったものが
腐敗して 積もってゆく
それを眺めながら
わたしの中に 眠って しまったはずの
勝利への執念のようなものが
突然 起き上がる
負けるわけにはいかない! そう 叫ぶ
腐敗 は 腐り 敗れる と書く
たとえ腐っても
敗れるわけにはいかないのだな